私は全人類の中でも上位5%、もしかしたら2%に入るくらい精神的な刺激に弱い(エログロホラー無理、大きな音や光が無理)と自負しています。でも映画『オッペンハイマー』はどうしても見たくて、前売りまで買って待機していました。
ところが困ったことに、”オッペンハイマー”で検索すると映画のジャンルのところが”ホラー”とか”スリラー”になっている。しかも見に行く前の日にちきりんさんがXでこんなことを。
★これから観る人へのお勧め★
— ちきりん (@InsideCHIKIRIN) 2024年4月9日
・歴史的事実を知らない人は事前勉強必須
(アメリカとソビエトとドイツのどれとどれが組んでたかとか、赤狩りって何か知らないと厳しい)
・人物相関図も先に勉強していったほうがいい
・音響設備がよく画面の大きな(没入感が得やすい)iMaxお勧め…
(画面では見切れていますがこの下に)「心の弱い人には勧めません」とはっきり。
こんなわけで、大変な覚悟をして映画館に入りました。
結果、いくつかのポイントを押さえておけば精神的にあまりタフでない人でも大丈夫だと個人的には思えるレベルでした。なるべくネタバレしないようにポイントを挙げていきます。鑑賞したいけど耐えられるかどうかわからない、と思っている方の参考になれば幸いです。
この映画の大きな特徴は音です。ものすごい臨場感で音が迫ってきます。しかも画面のスピーディーな展開に合わせるように急に大きめの音量が鳴ったりします。そこに耐えられるかどうかが分岐点かと思います。
特に序盤はかなりリズミカルに画面が切り替わります。主人公オッペンハイマーが見ている核分裂や核融合の幻影が、ディズニーランドのスペースマウンテンに乗ったときのような映像で表現され、恐怖心をかき立てるような音が流れます。そこが最初の関門です。
その後はしばらく落ち着いていて、次の山にして映画のクライマックスになるトリニティ実験の場面でまた爆音が流れます。私はここで大きな音がするという情報を事前に入れていたので、耳を塞いで(←)待機していました。ただわかっていてもかなりの衝撃です。空気が震える感じ。音は全編通して注意する必要があります。
そしてもう1つ危なかったのが、オッペンハイマーの幻視です。原爆が投下された後、オッペンハイマーは倫理的な呵責に苛まれながらも聴衆の前で演説をする。その場面で被爆地を彷彿させる幻影が現れます。ここはオッペンハイマーの心理を観客が追体験するようにできているので、より強く感覚を揺さぶられることになります。私は半目の状態でしか見られませんでした(この後もう一度同じような場面があります)。
振り返ってみると大きな関門はこんなところかなと思います。個人的には予想していたよりは許容できるレベルで、それよりも映画の奥深さに引き込まれてあっという間に3時間が過ぎてしまったという感覚です。
ただ私が挙げたのはあくまで視覚や聴覚といった感覚レベルの話で、ストーリーや描写に対して感じる居心地の悪さ、胸糞悪さはまた別の話。そこをどう受け取るかは人それぞれかと思いますので留意いただきたく思います。
しかしながら一言ではとても片付けられない、知的満足度のとても高い映画なので、もし大丈夫そうだと思われたらぜひ映画館で鑑賞してほしいです。