アウトプットはストレスから~2022年の読書記録

特別お題「わたしの2022年・2023年にやりたいこと

2022年もそれなりの数の本を読みました。面白い本、今は意味が分からない本、読んで損した本。図書館で借りた本、紙の書籍を買った本、Kindleで通勤時間に読んだ本。すべてについて感想を述べても長いし面白くないので、テーマを設けていくつかの本を取り上げたいと思います。

制作そして習慣

2022年の読書初め坂口恭平『自分の薬をつくる』。年末年始の間、自由にはためかせていた思考が日常に戻ると失われてしまう、そんな恐怖感を持っていたときにちょうど図書館の予約の順番が回ってきたのである。

この本において「薬」の意味するところは「日課」。毎日薬を飲んでいれば体調が改善されるように、日課を作れば自分自身が変わっていく。そしてその薬を自分で「つくる」ということが大事。食べたものを排泄するように、人間はアウトプットしないと体を悪くしてしまう。インプット一辺倒にならず、毎日何かをつくる時間を設けることで健康になろうというのがこの本のメッセージだった。

これをきっかけに日課すなわち習慣に関して書かれた本に手が伸びる。メイソン・カリー『天才たちの日課』および『天才たちの日課 女性編』では、その優れたアウトプットによって歴史上に名を残す人物たちの生活が(健康的かどうかは別にして)規則正しいリズムを刻んでいたことを知る。

ミニマリストの佐々木典士による『ぼくたちは習慣で、できている。』では、この評伝本を引きながら、習慣には人生を変える力があることが氏の実践とともに具体的に示されている。この本では坂口恭平についても触れていて、習慣の世界では相互参照のサークルが出来上がっていることを知った。
カリーの本で天才の1人として取り上げられている村上春樹『走ることについて語るときに僕の語ること 』は、ものづくりと習慣に相関があることの生きた証言だ。

知的生産の源

何かを作るといえば知的生産だろう、ということで梅棹忠夫の古典『知的生産の技術』を読んでみたりする。

知的生産というのは、頭をはたらかせて、なにかあたらしいことがら情報を、ひとにわかるかたちで提出することなのだ、くらいにかんがえておけばよいだろう。(p. 20)

京都学派に連なる上野千鶴子『情報生産者になる』は生産と消費にはっきり優劣をつける。

情報生産の最終ゴールは情報生産物をアウトプット(出力)することです。どれだけ情報をインプットしていても(これを博識と言います)、あるいはそれから多くの情報処理を経ていても(これを智恵と言います)、アウトプットしない限り、研究にはなりません。(p. 20)

こうした言葉に背中を蹴飛ばされてこうして細々とブログを書き始めた。

池澤夏樹『知の仕事術』はもっと優しく、自身がどうやって制作しているのか手の内を明かしてくれる。

身体が食べることで新陳代謝を行うのと同じように、脳の中は、知的な食べ物の摂取と不要なものの排出によって常に新しくなっている。
その入れ替えを意識的に行いたい。(p. 10)

ここでも食事と排泄の例が持ち出される。

現職サバイバルから転職サバイバルへ

夏前に職場で何とも言えない理不尽なことがあり、どうにかしてこの状況を生き延びなければならなくなった。7月から8月にかけて下園壮太『自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れをとる技術』、わび『この世を生き抜く最強の技術』、ぱやぱやくん『飯は食えるときに食っておく 寝れるときは寝る』と、自衛隊出身者が書いたメンタルライフハックを立て続けに読んだ。タイトルを並べてみただけでも当時の息苦しさがよみがえってくる。

これらの本から感情を捨てる、受け流す、自分を癒す方法を学びとして得たが、これは非常時の切り抜け方であって、ずっとこのモードでいたら本当に終わってしまう。いずれは動かなければいけないということで、秋ごろから転職関連の読書が増え始める。

ではこの先どうやって働くのか。橘玲『不条理な会社人生から自由になる方法』勝間和代『会社に人生を預けるな』は非常に似たようなことを言っていて、要は市場で評価されるスキルを持つか、さもなければ不自由で「不安定」な会社員として生きるしかないということだ。

そんなん特別に能力に高い人しかできない…と落ち込むなかれ。岡田斗司夫『僕たちは就職しなくてもいいのかもしれない』で提案されている会社にいなくて済む方法は、いい人になってとにかく色々な人の手伝いをする、それが50個くらいあれば食べていけるっしょ、というラディカルな解決策を提示している。

まとめ

日課を作ることから始まり、自分に合った制作を模索し、仕事と生活との関係を考える、そんな1年でした。

私が本を読むのは多くは通勤退勤時の電車の中です(これも日課の1つ)。今年もたくさんの本をKindleに入れました。そういう時に読む本はどうしても「ストレス発散」に偏りがちです。会社の嫌な奴にどう対処するかや労働時間をいかに減らして生きるか等。

でも一方で、こうした社会生活を営む上でのストレスは現代人の制作の糧になっているのもまた事実かと思います。来年ももストレスがある限り、いやあってもなくても、アウトプットで健康を保ちたいと思います。

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